3回目のブログリレーのバトンが回ってまいりました。どうも映画好きのH.Tです。
映画を観に行くことが趣味の自分ですが、近年で稀にみる傑作と出会ったので、その作品について触れておかなければと、この場を借りてつらつらとネタバレに気を付けつつ感想を書かせていただきます。
総監督・脚本/庵野秀明
監督・特技監督/樋口真嗣
音楽/鷺巣詩郎 伊福部昭
出演/長谷川博己 竹野内豊 高良健吾 石原さとみ
大杉漣 柄本明 国村隼 平泉成 余貴美子
松尾諭 高橋一生 市川実日子 塚本晋也
野村萬斎 他多数
http://www.shin-godzilla.jp/
既に公開前から予告編より漂うただならぬ気配にワクワクしていた本作。公開して間もなくと、そして数日前と、わざわざ合計2回も映画館へ足を運びました。
それほどの見応えに満ちあふれています。そして「観て!観て!」と職場や友達に対しての布教活動に勤しんで鬱陶しがられる日々を過ごしております。
歴史としてゴジラは広島と長崎への原爆投下を経た終戦後、東宝製作の映画内で核をモチーフにした荒ぶる怪獣として誕生しました。当時ゴジラは人々から恐れられる存在だったのです。
そして年月を経てシリーズ化される毎にキャラクターとしての価値を見出されて、敵の怪獣を倒す正義の味方・ヒーローとして観客から愛される存在へと変化を辿ります。
そんなゴジラは愛されすぎるあまりに、顔付きはキュートになって、現代で例えるならば〝ゆるキャラ〟的にお茶目で親しまれる存在にまで変貌を遂げます。
事実としてあまり知られてませんが、ゴジラは空を飛んだり、シェー!のポーズを披露したり、一時期は方向性が完全にブレてしまうほどで、恐怖の対象からかけ離れて格下げしてしまいます。
そして2000年代にかけて晩年のゴジラは鳴かず飛ばず。映画でFINALと銘打ってもヒットせず、残念ながら日本での人気には陰りを見せ始めました。
そんな現状に反して、海外でも人気を得ていたゴジラはハリウッド版の映画も制作されて多大な興行成績を収めましたが、米国産のゴジラは何かが違うと日本のゴジラファンは首をかしげる一方。
もう純度100%の日本産ゴジラでは、二度と一定の水準を超えられないだろうと誰もが危惧していたところに、このシン・ゴジラは誕生したのです。
凄惨な戦争体験を味わった後の第1作公開時と同じく、東日本大震災という凄惨な災害体験を経て、日本人へ新たに放射能の大きなトラウマを植え付けられて5年が経った今、映画で再びゴジラは恐れる核の化身となりグレードアップして脅威をもたらします。
大都市東京をただ歩くだけのゴジラは、様々な建築物を倒壊させて街中に甚大な被害を与えます。スクリーンに映し出されるおぞましさは3.11に見た絶望的な光景がフラッシュバックするほどリアル。
段々と想定外にエスカレートしていく緊急事態に対してお茶を濁していた政府も慌て始めます。その官僚たち同士で繰り広げられる議論・会話劇は早口で畳みかけるようにリズミカルに白熱します。
大体の怪獣映画は、怪獣が映っていて街が壊されるシーン以外には魅力がないものが多数ですが、シン・ゴジラはゴジラが登場する場面以外も見入ってしまいます。
実際に巨大正体不明生物・ゴジラが現れた時に政府がどう動くかの入念な取材に裏付けされた現実感と緊迫感と臨場感のあるシミュレーションに、終始ずっと息つく暇もなくスクリーンに釘付けとなるのです。
そして釘付けになる理由は他にもあって、本作の監督である庵野秀明が手掛けたアニメ・新世紀エヴァンゲリオンでの楽曲をそのまま使用していたり、往年のゴジラ映画の劇伴をそのまま使用していたり、随所でファン心理を盛り立てる遊び心のある仕掛けが効果的な演出として数え切れないほど施されていて、否が応でも気分を高揚させられます。
また台詞を発する人間はほとんど政府関係者というシン・ゴジラですが、役人のお堅いイメージとは打って変わり人間味にあふれていて、一くせも二くせもある登場人物たちの魅力あふれるキャラクターも、映画をより面白くしている要素の1つとなっています。
では、愛すべき彼らが口にした映画内での名言をいくつか紹介してみます。
矢口蘭堂/内閣官房副長官
先の戦争では旧日本軍の希望的観測、机上の空論、こうあってほしいという発想などにしがみついたために、国民に300万人以上の犠牲者が出ています。根拠のない楽観は禁物です。
カヨコ・アン・パタースン/米国大統領特使
祖母を不幸にした原爆を、この国に3度も落とす行為は、私の祖国にさせたくない。
尾頭ヒロミ/環境省自然環境局野生生物課長補佐
ゴジラより怖いのは、私たち人間ね。
里見祐介/内閣総理大臣臨時代理
避難とは、住民に生活を根こそぎ捨てさせることだ。
赤坂秀樹/内閣総理大臣補佐官
スクラップ&ビルドでこの国はのし上がってきた。今度も立ち直れる。
巨大正体不明生物出現という、前例のない緊急災害事態に武器無制限使用の許可を下した総理大臣の苦渋の決断もむなしく、自衛隊による総攻撃はゴジラにとっては蚊に刺されたかの如く全く歯が立たない。
日を追うごとに国際的問題にまで発展し、アメリカの東京爆撃計画のカウントダウンが迫る中で、日本はどうゴジラに立ち向かっていくのかというシナリオに、このような言葉が散りばめられているのです。
改めて刺さります。改めてシビれます。
シン・ゴジラは、いわば国防論にまつわる映画ですが、右翼思想ではないところが素晴らしく、日本という国と人の底力によって掴み取る希望を描き切っています。
膨大な情報量が凝縮されて2時間ずっとアドレナリンの分泌が止められないシン・ゴジラ。
社会現象にもなっている昨今、まだ観ていない天邪鬼な方は一度このブームに乗ってみては如何でしょう。公開が終了してしまうまでに是非とも劇場へと足を運んで下さい。絶対に損はさせません。
https://youtu.be/ysRIwlEBjuw